加野行政書士事務所

民事信託の課税関係



不動産を信託すると、『信託』を原因とした所有権移転登記手続きを行い、登記簿の甲区欄にその旨が記載されます。つまり、登記簿上の所有者が形式上委託者から受託者名義に変わります


信託設定時の課税は所有権移転登記手続きにかかる登録免許税がかかります。これは、当該不動産(土地・建物)の固定資産税評価額の4/1000です

次に、受託者に対する不動産取得税については、登記簿上の形式的な所有権移転で課税されません。


委託者に対する譲渡所得税も、信託による形式的譲渡で委託者に利益が発生しないので、課税されません。

毎年1月1日の不動産所有者に対して課税される固定資産税がありますが、信託による所有権移転登記をした翌年の5月から7月頃にかけて、不動産の形式上の名義人である受託者に対して、固定資産税の課税通知書が送付され、受託者が新たに固定資産税の支払い義務がありますが、実務上は、信託財産に関する費用として、信託財産の中から受託者が支払うことになりますので、実質的には受益者が負担していることになります。

固定資産税は、信託により納税義務者が変更になるだけで、税額が増えるわけではありませんので、新たな税金発生の問題にはなりません

自益信託(委託者=受益者)は、実質的な財産権の移動(経済的な利益帰属先の変更)はありませんので、贈与税が課税されることはありません。

自分以外の者のために信託を設定する他益信託は、実質的な財産権の移動がおこりますので、信託契約が発効したした時点で、委託者から受益者への不動産価格相当の贈与がなされたものとして(みなし贈与)、贈与税が課税されます